11月に入り秋晴れが続く中、寒くなる日が増えておりますが、いかがお過ごしでしょうか。
今回は、退院された患者様の「食事ができるようになるまでのリハビリ」をご紹介したいと思います。
■脳卒中(左視床出血)の男性
年齢:80歳代
夕食中に手の痺れや脱力感があり、救急搬送されました。
入院当初は飲み込む力が弱く、口から食事を取ることができず、1日3食ともチューブで直接胃の中に栄養を取っていました。少しの水を飲んでも、咽込みが多い患者様でした。
退院するにあたり、ご家族からは口から食事を取れるようにしてほしいとのご希望がありました。
《初期評価》
●RSST*:2回/30秒
●MWST*:スコア3(飲み込んだ後、咽こんでしまう)
●水飲みテスト*:スコア3(飲み込んだ後、咽こんでしまう)
*RSST・・・30秒の間に何度も唾を飲み、飲み込む力を評価する
*MWST・・・3ccのお水を飲み、飲み込みの力を評価する
*水飲みテスト・・・30ccの水を一気に飲み、飲み込みの力を評価する
原因は、喉頭挙上力(飲み込む際の筋力)と口腔内の感覚の低下に伴い、食物や水分を飲み込むまでに時間がかかってしまうため咽こんでしまい、食事を取る際にも誤嚥の危険性がありました。
そのため、飲み込みの力を向上させ、自分で食べることを目的に以下のようなリハビリを開始しました。
《リハビリの内容》
◇入院翌日から
言語聴覚士によるリハビリを開始しました。
具体的には、①口の中を綺麗にし、誤嚥性肺炎を予防する口腔ケア、②飲み込みの力を上げる口腔体操、③飲み込みしやすくするためのアイスマッサージを行いました。
◇入院から2週間後
嚥下造影検査を実施。(嚥下造影検査:飲み込みの過程や状態をX線で正確に検査するもの)
嚥下造影検査を実施した結果、飲み込みの力が向上したと判断し、まずは昼食のみ、お粥やトロミのついたお水から食事を始めました。しかし、咽込みがあるため言語聴覚士の介助の元で実施していました。
◇入院から3週間後
食事をする体力もつき、この頃から朝・昼の食事を開始しました。それまでは、食べ物を使わずマッサージや筋力訓練が主な「間接嚥下訓練」でしたが、直接食べ物を食べる「直接嚥下訓練」や嚥下(飲み込み)体操をリハビリで開始しました。
◇入院から4週間後
飲み込む力が向上し、朝昼晩とご自身で食事ができるようになりましたが、食べるスピードが遅かったり、途中で食べるのを中断したりすることもあったため、スタッフで声掛けが必要になっていました。しかし、むせ込むことはなく、安全な食事ができるようになっていました。
《最終評価》
●RSST:3回/30秒
●MWST:スコア5(咽込むことなく飲み込み可能)
●水飲みテスト:スコア3
退院時には、主食はお粥、おかずは細かく刻んだ食事になり、水もトロミが不要になりました。
退院するにあたり、担当言語聴覚士と栄養士による調理方法の指導を行いました。
現在は、奥様が作られた食事を取りながら、通所介護に通われ生活しています。